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新築マンション・新築戸建の在庫が増加中――「希少物件だから値下がりしない」は本当か?
みなさん、こんばんは。
株式会社リライトの田中です。
今回は、希少物件の値下がりリスクについて。
最近、不動産会社専用サイト「レインズ」を見ていると、これまであまり掲載されなかった新築マンションや新築戸建を目にする機会が増えてきました。
さらに、「価格相談可能」「決算前のため条件を相談できます」といった情報も届くようになっています。
では、本当に新築住宅は売れにくくなり、在庫が増えているのでしょうか。
今回は、公表されている客観的なデータを使い、説明してみたいと思います。
そもそも「在庫」とは?
不動産市場でいう在庫とは、簡単にいうと「まだ買い手が決まっていない住宅」です。
お店に例えると、棚に商品を10個並べて7個売れた場合、残った3個が在庫です。
新しい住宅が次々と販売されても、それ以上の速さで売れれば在庫は増えません。
反対に、売り出される住宅の数に対して、買う人が少なければ在庫は増えていきます。

首都圏の新築マンションは2か月連続で在庫増加
不動産経済研究所が公表したデータによると、首都圏の新築マンション販売在庫は、次のように推移しています。
| 時点 | 販売在庫 |
|---|---|
| 2026年5月末 | 6,270戸 |
| 2026年6月末 | 6,389戸 |
| 2026年7月末 | 6,597戸 |
5月から7月までの2か月で327戸、率にすると約5.2%増加しました。
さらに、2025年7月末の5,940戸と比べると、1年間で657戸、約11.1%増えています。
7月は新たに発売された戸数が2,145戸となり、前月より37.1%増えました。そのため、在庫増加のすべてを「売れなくなったから」と考えるのは正確ではありません。新しいマンションが多く発売された影響もあります。
ただし、発売した月に売れた割合を示す「初月契約率」は、5月が64.9%、6月が62.5%、7月が69.5%でした。
一般的に好調かどうかの目安とされる70%を、3か月続けて下回っています。
つまり、
新しく売り出されるマンションが増える一方で、それを十分に吸収できるほど販売が進んでいない
という状況が見えてきます。
なお、2026年7月の東京23区における新築マンション平均価格は2億6,520万円でした。
ただし、これは都心の大規模な超高額マンションが発売された影響を強く受けた数字です。「東京23区の普通のマンションがすべて2億6,000万円になった」という意味ではありません。
それでも、年収1,000万円程度の会社員が、給料と住宅ローンだけで無理なく購入できる価格帯ではなくなっていることは確かです。
東京都の新築戸建も直近2か月で在庫増加
東日本不動産流通機構のデータによると、東京都でレインズに登録されている新築戸建の在庫は、次のように推移しています。
| 時点 | 在庫件数 |
|---|---|
| 2026年5月末 | 2,986件 |
| 2026年6月末 | 3,175件 |
| 2026年7月末 | 3,305件 |
5月から7月までの2か月で319件、約10.7%増加しました。
その一方で、成約件数は次のように減少しています。
| 月 | 成約件数 |
|---|---|
| 2026年5月 | 410件 |
| 2026年6月 | 354件 |
| 2026年7月 | 316件 |
新規登録件数は、5月の1,112件から、6月1,267件、7月1,360件へ増加しています。
つまり、新しく売り出される戸建が増えているのに対して、実際に売れた件数は減少しているのです。
これはマンションよりも分かりやすい在庫増加のサインです。
ただし、2026年7月の在庫3,305件は、前年同月の3,510件より5.8%少ない水準です。
そのため、
「新築戸建の在庫が歴史的な水準まで積み上がった」
とまではいえません。
正確には、
「前年より在庫は少ないものの、直近2か月では、新規登録の増加と成約件数の減少によって在庫が急速に増え始めている」
という状況です。
なぜ新築住宅の在庫が増えているのか?
原因は一つではありません。私は、主に次のような要因が重なっていると考えています。
1.住宅価格が会社員の収入から離れすぎた
土地代、建築費、人件費などの上昇によって、新築住宅の価格は大きく上がりました。
しかし、一般の会社員の収入が、住宅価格と同じ速さで増えているわけではありません。
価格が上がれば、購入できる人の数は当然少なくなります。
2.住宅ローンの負担が重くなっている
物件価格が高くなれば、借りる金額も大きくなります。
さらに金利が上がれば、毎月の返済額も増えます。
マンションの場合は住宅ローンだけでなく、管理費、修繕積立金、固定資産税、駐車場代も必要です。
「銀行から借りられる金額」と「無理なく返せる金額」は同じではありません。
3.売主側も簡単には値下げできない
不動産会社やマンションデベロッパーも、高い土地代や建築費を支払って住宅をつくっています。
そのため、売れ行きが鈍くなっても、すぐに価格を下げられるとは限りません。
まずは、
- 購入者への諸費用サービス
- 家具や家電のプレゼント
- 個別の価格相談
- 不動産会社への販売協力依頼
- レインズへの物件掲載
など、表向きの販売価格を下げない方法が取られることがあります。
そのため、統計上の平均価格が上がっていても、実際の販売現場では価格相談が増えているということが起こります。
4.買う人が物件を厳しく選ぶようになった
価格が高くなるほど、購入者は失敗したくないと考えます。
同じ1億円でも、駅から近い物件、管理状態の良い物件、将来売りやすい物件に需要が集まります。
一方で、駅から遠い、管理費が高い、間取りが使いづらいなど、条件の弱い物件は売れにくくなります。
今後は、すべての住宅が同じように値下がりするのではなく、条件の弱い物件から値下げが始まる可能性があります。
「希少物件だから値下がりしない」は正しいのか?
私は、「希少物件だから価格は下がらない」という考え方には注意が必要だと思います。
希少物件の価格は、次の二つに分けて考えることができます。
物件価格=周辺相場に基づく価格+希少性に対するプレミアム
例えば、周辺相場に基づく価値が3億円、眺望や立地などのプレミアムが2億円で、合計5億円になっている物件があるとします。
不動産市場全体が下がれば、3億円の基礎部分は当然影響を受けます。
さらに、購入者の資金力や投資意欲が低下すれば、2億円のプレミアム部分も小さくなる可能性があります。
つまり、希少物件であっても市場全体が下がれば価格は下がります。
ただし、本当に同じ条件の代替物件がなく、欲しい人が継続的に存在するのであれば、一般的な物件より下落率が小さくなる可能性はあります。
正確には、
希少物件は値下がりしないのではなく、一般的な物件より値下がり幅が小さくなる可能性がある
ということです。
しかも、すでに希少性が十分に価格へ上乗せされている場合、そのプレミアムが今後も維持されるとは限りません。
「希少物件」という言葉だけで安心するのではなく、その希少性に対して現在いくらのプレミアムを支払うことになるのかを検証する必要があります。
すでに値崩れが始まっているのか?
現時点では、「新築住宅全体の値崩れが始まった」と断定できる段階ではありません。
新築マンションは、直近2か月だけでなく前年同月比でも在庫が増えていますが、7月には新規供給も大きく増えました。
東京都の新築戸建は直近2か月で在庫が約10.7%増えていますが、前年同月よりはまだ少ない水準です。
したがって、現在は、
売り手市場が終わり、買い手が物件を選べる市場へ変わり始めている途中
と考えるのが近いと思います。
信号に例えるなら、まだ赤信号ではありません。
ただし、青信号から黄色信号へ変わった可能性はあります。
今後、在庫増加がさらに3~6か月続き、成約件数の減少、販売期間の長期化、価格相談や値下げ物件の増加が同時に確認されれば、価格調整が本格化する可能性があります。
大切なのは「平均価格」ではなく、実際に売れる価格
不動産の価格は、売主が自由に決められます。
しかし、売出価格がそのまま不動産の価値になるわけではありません。
実際に買主が現れ、売買契約が成立した価格が、その時点での市場価格です。
これから不動産を売却する方は、過去の高値だけを基準にせず、
- 現在の競合物件数
- 直近の成約価格
- 売り出してから成約するまでの日数
- 売出価格と成約価格の差
- 同じ地域の在庫増減
まで確認することが大切です。
市況が変わる時期は、少し高く売り出して長期間売れ残るより、早い段階で市場に合った価格を設定したほうが、結果的に高く売れることもあります。
株式会社リライトでは、売出価格だけでなく、実際の成約事例や競合物件、在庫状況などを確認しながら、それぞれの不動産に合った売却方法をご提案しています。
「今、本当に売るべきか」「価格を見直すべきか」「もう少し待つべきか」とお悩みの方も、まずはお気軽にご相談ください。
※新築マンションと新築戸建では、調査地域や集計方法が異なります。新築マンションは首都圏1都3県の販売在庫、新築戸建は東京都でレインズに登録された物件の集計であり、両者の件数を単純に比較することはできません。
【参考資料】

