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売るだけが不動産会社の仕事ではない――相談員研修で再確認した「トラブルを未然に防ぐ責任」
みなさん、こんばんは。
株式会社リライト 代表の田中です。
今回は、トラブルを未然に防ぐ責任について。
今日は午後から、神奈川県宅建協会・神奈川本部が実施する「令和8年度相談員研修会」をオンラインで受講しました。
私は現在、神奈川県宅建協会横浜東部支部の相談員として、支部だけでなく、横浜市役所や神奈川区役所で行われる不動産相談にも携わっています。
不動産会社の仕事というと、物件を紹介し、売買契約を成立させる仕事をイメージされる方が多いと思います。
しかし、実際の不動産取引の現場には、
「契約した後に説明されていない問題が発覚した」
「預けた敷金や家賃が返ってこない」
「価値が上がると言われて土地を買ったが、実際にはほとんど売れない」
「契約相手の会社と、宅建業免許を持つ会社が別だった」
といった、複雑な不動産トラブルがあります。
今日の研修では、相談対応の手順や心構えに加え、実際にあった弁済事例をもとに、トラブルの原因や判断のポイントを学びました。
相談員は「どちらが正しいか」を決める人ではない
相談員として大切なのは、相談者のお話を聞いて、すぐにどちらか一方の味方になることではありません。
相談者の方は、不安や怒り、後悔を抱えて相談に来られます。
「騙されたかもしれない」
「大切なお金が戻ってこない」
「家を買ったのに、住み始めたら問題が見つかった」
そのお気持ちに寄り添うことは当然です。
一方で、相談員には冷静さも求められます。
確認しなければならないのは、
- 誰と契約したのか
- どのような契約書を締結したのか
- 誰が、何の名目でお金を受け取ったのか
- 重要事項説明では何を説明されたのか
- 実際の取引内容と契約書の内容が一致しているか
- 被害や損害を裏付ける資料があるか
といった具体的な事実です。
相談者の頭の中で絡まってしまった糸を一本ずつほどき、制度上できることと、難しいことを整理してお伝えする。それが相談員の役割だと思っています。
相談員は裁判官ではありません。
しかし、相談者が次に何をすべきかを考えられるよう、道筋を照らすことはできます。
それが、相談員としての心構えであり、使命です。
最近見られる不動産トラブル事例
今回の研修では、特に印象に残る事例がいくつも紹介されました。
1.「将来必ず値上がりする」と勧められた原野の購入
旅行に当選したと呼び出され、「北海道の土地は将来必ず値上がりする」と説明され、その場で原野を購入した事例です。
数年後、別の不動産会社に売却を依頼したところ、購入価格とは大きくかけ離れた市場価値しかないことが判明しました。
こうした取引では、一度被害に遭った方に対して、
「その土地を高く売却できます」
「買い戻すために測量費が必要です」
などと持ちかけ、さらに費用を支払わせる二次被害にも注意が必要です。
2.管理会社が敷金や家賃を預かったまま倒産
管理会社が複数の入居者から敷金や家賃を集金した後、倒産し、行方が分からなくなった事例もありました。
ただし、同じ不動産会社が受け取ったお金でも、「賃貸仲介業務として受け取ったのか」「管理業務として受け取ったのか」によって、保証制度の対象となるかどうかが異なる場合があります。
貸主様からすれば、どちらも「不動産会社に預けたお金」です。
しかし、制度上は契約の内容やお金の流れが細かく確認されます。
3.土地売買と建築請負契約を分けた取引
建築条件付き土地の売買契約と建物の建築請負契約を締結し、多額のお金を支払ったものの、工事が始まらないまま会社が閉鎖された事例もありました。
建築請負契約は、原則として宅地建物取引とは別の契約です。
ただし、土地売買と建築請負が実質的に一体となっている場合には、契約日、代金の決め方、建物プランの内容、広告表示などを総合的に見て判断されます。
契約書が2通に分かれているから、安全な取引とは限りません。
4.購入後に建物の傾きや基礎の沈下が発覚
中古住宅を購入した直後、床の傾きや基礎の沈下などが判明した事例も紹介されました。
さらに、契約した法人には宅建業免許がなく、同じ代表者が経営する別法人だけが宅建業免許を持っていたという複雑なケースでした。
代表者が同じでも、法人が違えば別会社です。
契約前には、会社名、宅建業免許番号、契約当事者、売買代金の振込先まで確認する必要があります。
不動産トラブルを防ぐための実務上のポイント
不動産トラブルは、契約後に解決しようとすると、時間も費用も精神的な負担も大きくなります。
だからこそ、契約前の確認が重要です。
まず、「必ず値上がりする」「今日契約しなければ買えない」など、判断を急がせる説明を受けても、その場で契約しないことです。周辺相場や取引事例を複数の不動産会社に確認してください。
次に、宅建業免許を持つ会社と、実際の契約相手が同一かを確認します。会社名が似ている、代表者が同じというだけでは十分ではありません。
中古住宅では、建物状況調査や専門業者による点検も有効です。床下、屋根裏、雨漏り、傾き、給排水設備などは、短時間の内覧だけでは分からないことがあります。
また、敷金、手付金、工事代金などを支払う場合は、「誰に」「何の目的で」「いつまで預けるのか」を契約書で明確にすることが大切です。
口頭での説明だけに頼らず、重要な説明や合意事項は書面に残す。地味ですが、これが最も有効な予防策の一つです。
研修後は、二つの契約準備へ
相談員研修を終えた後は、そのまま会社に戻りました。
まずは、明日予定している横浜市神奈川区の借地権付建物の売却契約の準備です。
借地や借地権の取引では、土地所有者である地主様との関係、名義変更承諾、承諾料、借地条件、建替えや譲渡に関する制限など、一般的な所有権の不動産とは異なる確認事項が数多くあります。
続いて、明後日に予定している神奈川県西部の実家の空き家の買取契約の準備。
こちらは建物が未登記です。
未登記建物の場合、固定資産税の資料、建築時期、所有関係、増改築の履歴などを確認し、契約書や重要事項説明書にどこまで記載するかを慎重に検討しなければなりません。
実家処分や不動産相続をきっかけに、長年放置されていた未登記建物が見つかることは珍しくありません。
二つの契約書類を確認し、気がつけば、すっかり遅い時間になっていました。
毎日が忙しい…。
ただ、今日の相談員研修で学んだことと、夜まで続けた契約準備は、決して別々の仕事ではありません。
トラブルが起きた後の相談事例を学び、その経験を、これから締結する契約の安全性に生かす。
それこそが、相談員を務める不動産会社としての責任だと思います。
不動産の契約は「成立させること」より「安心して終えられること」
当社には、一般的な不動産売却だけでなく、底地、借地、借地権、空き家、未登記建物、不動産相続、1円不動産、1円物件、0円物件など、他社では取り扱いが難しい不動産のご相談も寄せられます。
売却できるのか。
買取してもらえるのか。
相続した実家をどう処分すればよいのか。
所有者様が抱えている不安は、物件ごとに違います。
私たちは、契約を成立させることだけを目的にはしていません。数年後に振り返ったとき、売主様にも買主様にも「この取引で良かった」と思っていただけることを目指しています。
不動産トラブルを完全になくすことは難しいかもしれません。
それでも、丁寧に調査し、正直に説明し、書面に残すことで、防げるトラブルは少なくありません。
横浜をはじめ、同じようなお悩みをお持ちの方はお気軽にご相談ください。

