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津波で失われた街に、なぜ人は戻るのか――宮城県気仙沼市の物件調査で感じた「土地と生きる覚悟」
みなさん、こんばんは。
株式会社リライト 代表の田中です。
今回は、気仙沼市出張1日目について。
「今日は朝から気仙沼へ行ってきました」
……と書こうと思いましたが、朝ではありませんでした。
起床したのは、午前2時30分。
まだ夜です。外も真っ暗です。
今回は、宮城県気仙沼市にある不動産の現地調査。横浜から電車で向かうと約5時間30分ですが、乗り継ぎを一本逃せば約6時間30分かかります。
それならば、自分のペースで動ける車の方がよいと判断し、途中で休憩を取りながら気仙沼市へ向かいました。
そして午前9時30分、無事に気仙沼市役所へ到着。
長い一日の始まりです
市役所だけでは終わらない、地方不動産の物件調査
今回の調査では、気仙沼市役所をはじめ、
- 上下水道部門
- ガス部門
- 土木事務所
- 危機管理部門
- 法務局
などを回りました。
一度調査した上下水道部門にも、確認事項が生じたため再訪問。
不動産調査では、「おそらく大丈夫だろう」で終わらせてはいけません。
特に地方の不動産では、登記上の情報と現地の利用状況が異なっていたり、前面道路の扱いが複雑だったり、上下水道の配管が敷地の前まで来ていなかったりすることがあります。
さらに、気仙沼市のような沿岸地域では、津波浸水想定、避難場所、土地の高さ、防災上の制限なども無視できません。
売却価格だけを調べるのが「査定」ではありません。
その土地を誰が、どのように利用できるのか。
どのようなリスクがあり、どうすれば安全性を高められるのか。
将来、買主様が困る可能性はないのか。
そこまで調べて、ようやく不動産の本当の姿が見えてきます。
午後の調査に影響した、強烈なニンニクタンメン
お昼は、地元で人気の「こけし食堂」へ。
注文したのは、こけし食堂特製のニンニクタンメンと半チャーハンです。
運ばれてきたタンメンは、野菜がたっぷり。

スープをひと口飲むと、ニンニクがガツンと効いています。
半チャーハンも「半」と呼ぶには十分すぎるボリュームでした。
どちらも、とにかくおいしい。
早朝から運転と調査を続けていた身体に、塩分とニンニクが染み渡りました。
ただし、午後に対応してくださった皆様には、この場を借りてお詫び申し上げます。
私の説明より先に、ニンニクが自己紹介していたかもしれません。(笑)
それでも、おかげで午後も集中力を切らすことなく、一日目いっぱい調査することができました。
初めて歩いた、気仙沼市の内湾地区
調査を終えた夕方、初めて気仙沼市の内湾地区を歩きました。
穏やかな海に漁船が浮かび、その向こうには山と街並みが見えます。
夕日に照らされた港の風景は、とても美しいものでした。
しかし、この場所は東日本大震災で甚大な被害を受けた地域です。
気仙沼市の公式記録によると、東日本大震災の津波は市内の一部で20メートルを超える高さに達し、住宅や店舗、車両などを押し流しました。津波後には大規模な火災も発生し、電気、ガス、水道、道路などの生活基盤にも深刻な被害が生じました。
内湾地区では、その後、魚町・南町地区を中心に被災市街地復興土地区画整理事業が進められました。
道路や宅地などの都市基盤を整備しながら、商業施設や事業所の再建、中心市街地としてのにぎわいの再生が目指されています。
現在の美しい街並みは、自然にできたものではありません。
そこには、土地を手放した人、残ることを決めた人、店を再建した人、行政と何度も話し合った人、そして復興を支えてきた多くの人たちの決断があります。
「なぜ、もう一度この場所に住むのだろう」
正直に申し上げると、最初に内湾地区を見たとき、私はこう考えました。
「これほど大きな津波に襲われた場所に、なぜもう一度住み、店を構えるのだろう」
不動産の仕事をしていると、どうしてもリスクを数字や条件で考えます。
津波浸水想定区域なのか。
土地の高さはどの程度か。
避難場所まで何分かかるのか。
建築や利用に制限はないか。
将来売却するとき、市場性はあるのか。
もちろん、これらは非常に重要です。
しかし、実際に現地へ足を運ぶと、数字だけでは説明できないものが見えてきます。
気仙沼には漁業があり、水産加工業があり、港で働く人たちがいます。市の震災記録でも、気仙沼は水産業とその関連産業、観光を中心とする地域として位置づけられています。
そこには仕事だけでなく、家族との暮らし、地域のつながり、先祖から受け継いだ土地、港町としての歴史や文化があります。
安全な場所へ移れば、すべてが解決するわけではありません。
地域を離れることで、失われてしまうものもあるのです。
リスクをなくすのではなく、リスクと共に生きる
自然災害のリスクを完全にゼロにすることはできません。
それは気仙沼に限った話ではありません。
横浜にも崖地や土砂災害警戒区域があります。河川の近くには洪水リスクがあり、低地には内水氾濫の可能性があります。
大切なのは、危険を知らないまま生活することではありません。
リスクを正しく知り、
- どこへ避難するのか
- どの経路を使うのか
- 建物をどのような構造にするのか
- どのような情報が出たら避難を始めるのか
を、日頃から考えておくことです。
「危険だから住んではいけない」と外から簡単に言うのではなく、地域の産業や暮らしを守りながら、どうすれば安全性を高められるのかを考える。
気仙沼の人たちは、津波のリスクを忘れたのではありません。
リスクを受け止めたうえで、この土地で生きていく方法を探し続けているのだと感じました。
地酒と刺し身から伝わってきた、気仙沼の底力
夕食は、内湾地区にある「福よし」へ。
地酒をいただきながら、新鮮なカツオやマンボウなどの刺し身を味わいました。

これが、本当においしい。
カツオは鮮度の良さが伝わる濃厚な味わい。マンボウの刺し身には独特の食感があり、地酒との相性も抜群でした。
店内で働く方々の姿や、楽しそうに食事をするお客様を見ていると、この街が長い時間をかけて取り戻してきた日常を感じます。
復興とは、道路や建物を新しくすることだけではありません。
お店に明かりがつき、料理が運ばれ、人が笑い、誰かが「おいしい」と言う。
そんな何気ない日常が戻ってくることも、復興なのだと思います。
地域を応援するために、私ができること
私は今回、物件調査のために気仙沼を訪れました。
しかし、調査だけをして帰るのでは、あまりにももったいない。
まずは地元のお店で、たくさん食べる。
地酒を飲む。
お土産を買う。
そして、今年のふるさと納税でも気仙沼市に寄付をする。
一人が使える金額は、それほど大きくないかもしれません。
それでも、多くの人が現地へ足を運び、地域のものを買い、地域で頑張る人たちを応援すれば、その積み重ねは確かな力になるはずです。
実際に行かなければ、分からないことがあります。
現地の空気を感じ、人と話し、地域の料理を食べることで、ニュースや資料だけでは見えなかったものが見えてきます。
気仙沼には、素晴らしい食べ物、景色、産業、歴史があります。
そして何より、笑顔と優しさがありました。
私は、この地域を応援したいと思います。
不動産の価値は、価格だけでは決まらない
株式会社リライトには、全国からさまざまな不動産のご相談が寄せられます。
空き家や実家処分、不動産相続、不動産トラブルをはじめ、再建築できない土地、底地、借地、借地権、私道、農地、山林など、一般的な不動産会社では取り扱いが難しい案件も少なくありません。
中には、1円不動産や1円物件、0円物件として売却を目指す土地もあります。
しかし、金額が低いからといって、その不動産に価値がないわけではありません。
土地には、そこで暮らした人の記憶があります。
地域の歴史があります。
次の使い方を待っている可能性があります。
私たちは横浜の不動産会社ですが、必要があれば全国各地へ足を運びます。
役所、法務局、道路管理者、上下水道部門などを調査し、現地を歩き、近隣の状況を確認する。そのうえで、仲介による売却、当社での買取、地域の方への譲渡など、その不動産に合った出口を探します。
「売れない」と言われた不動産でも、調査を尽くすことで、新しい可能性が見つかることがあります。
今回の気仙沼での一日も、不動産とは単なる土地や建物ではなく、人の暮らしと地域の未来を支えるものだと改めて教えてくれました。

