ご相談事例

戸建古くて広すぎて売れない実家の空き家の売却(京都府京丹後市)

ご相談者:S.D 様(お電話でのお問い合わせ)
京都府京丹後市

 ご相談いただいたのは、京都府京丹後市にある築 60 年以上経過した元ちりめん問屋の空き家についてでした。

前所有者様は実家を相続されたものの、建物は老朽化が進み、広すぎるために賃貸も難しく、地元の不動産会社に長期間売却を依頼しても全く売れる気配がありませんでした…。


「行政の生活支援制度を利用するためにも、この空き家を早く処分しなければならないのに、どうしても売れない…。このままでは先に進めない。本当に困っているんです。」


前所有者様の不安な気持ちと切実なご相談を受け、私が対応することになりました。

状況

古くて広すぎて売れない実家の空き家の売却(京都府京丹後市) 状況

 元ちりめん問屋だった建物は老朽化が著しく、床や壁は傷み、広さは 200 ㎡超。解体にもリフォームにも多額の費用がかかるため「売れない・貸せない」典型的な空き家でした。

さらに調査を進めると、敷地内に他人名義の未登記建物と管理者不明の祠が存在することが判明。
思わぬ問題に直面しましたが、未登記建物の所有者と直接交渉し、その場で手書きの贈与契約を取り交わすことで解決。

こうしてまずは「所有関係の整理」からスタートしました。

解決策

<買取りから有効活用までの流れ>
・2019年 買取り
 「もう、どうにもならない…」と不安に押しつぶされそうになっていた前所有者様からご相談を受け、私が即決で買取り。
この瞬間、前所有者様はホッと安堵され、思わず涙ぐまれていたのが今でも忘れられません。

・活用方法を模索、役所への相談
 買い取ったはいいものの、200m2の老朽化物件。今のままでは売却も賃貸も難しい状況。「ただ持っているだけでは、また町の負担になってしまう」ーそんな思いから京丹後市役所へ出向き、「町のために使っていただけるなら無償で貸します」と提案。
 しかし役所の方からは「行政としては借りられない」との回答…。
一瞬、暗雲が立ち込めました…。

・丹後暮らし探求舎との出会い
 そのとき紹介されたのが「丹後暮らし探求舎」。
担当の方からは「京丹後には移住希望者がたくさんいるが、最初の一歩が踏み出せずにいる人が多い。移住者向けシェアハウスはそのハードルを下げる場になるはずだ」と熱い言葉。
ここで「町の未来を一緒に作ろう」という心の灯りがともりました。

・地元設計会社との出会いと契約
 探求舎を通じて紹介されたのが誠実さあふれる地元設計会社の代表者様。
「京丹後を好きになってもらう場所をつくりたい。空き家を、夢を語れる場にしたい」ーその想いを真正面から受け止め、地元設計会社様と5年間無償で貸しますという使用貸借契約を締結。
 このときの握手の温かさと、代表者様の目の輝きが「この方なら必ず成し遂げてくれる」と確信させてくれました。
 
・DIYワークショップの開催
 設計会社様と丹後暮らし探求舎が中心となり、さらに市役所も巻き込み複数回にわたりDIYワークショップを開催。
参加者は地元住民から移住希望者まで、年齢も立場も様々。
 壁等を解体したり、壁に漆喰等を塗りながら「自分の手で空き家が生まれ変わっていくのが楽しい!」と笑顔を見せる若者。
木材を加工しながら「昔の町の賑わいを取り戻せる気がする」と話すご高齢の方。
その1つ1つの言葉に、地域の希望と誇りが込められていました。

ボロボロだった建物は、参加者の汗と笑顔、そして想いを吸い込みながら、徐々に息を吹き返していきました。

・「益実荘」誕生
 ついに、移住者向けシェアハウス「益実荘」が完成。
名前には「たくさんの方と一緒に想いを込めて改修した建物が、近所の方の想いも繋いでいけるように」(元々の織物問屋だったときの呼び名も考慮し)という願いが込められました。

完成お披露目会の場では、涙を流して喜ぶ方もいらっしゃいました。
「空き家が町のシンボルになるなんて信じられない」
「ここで新しい人との出会いが生まれるのが楽しみ」
地域に大きな希望の灯りがともった瞬間でした。

・シェアハウス事業の軌道化
 入居者はDIYワークショップに参加した人を中心に集まり、移住希望者たちがカバン1つで来て、生活できるという暮らしがスタート。
「自分が直した家に住むなんて夢みたい」と語る入居者の声も。
益実荘は、単なる住まいではなく、人と人とが繋がる交流の場となり、移住支援の拠点として成長していきました。

 借主である地元設計会社様はその後、益実荘を初めとして他の空き家も民泊やシェアハウスへ活用を本格化。
京丹後市全体の移住・空き家活用の流れが広がっていきました。

・売却と新たなスタート
 「益実荘のおかげで事業が安定してきました。これからも地域のために活用したいので、ぜひ購入させてください」ー借主である地元設計会社様からの申し出。
その想いに応え、ご希望金額でお譲りしました。

 契約・引渡しを終えた瞬間、胸の奥からじんわり込み上げてきたのは5年間の物語がついに1つの区切りを迎えたという感慨。
「空き家が人を呼び、街を変える力になる」ーその事実を益実荘が証明してくれました。

担当者からの一言

 この案件は利益を度外視して取り組んだもので、最終的にも利益はありませんでした。
しかし、地域の方々とともに空き家が再生し、多くの移住希望者に活用され、やがては必要とされる不動産として売却できたことは、何よりの財産だと感じています。
それに実際に益実荘に暮らし、京丹後市の良さを理解し、移住希望者から移住者になった方もたくさんいました。

 前所有者の「困った」という気持ちに答えるところから始まり、地元設計会社・丹後暮らし探求舎・地域の皆様と力を合わせて築き上げた「益実荘」。
この建物は、単なる不動産の取引きを超えた「ご縁の物語」になりました。

 これからも当社 株式会社リライトは、空き家・相続不動産・再建築不可物件等難しい不動産の課題解決に全力で取り組んでまいります!