ご相談事例

土地金額がつかみづらい私道の値段の話(神奈川県横須賀市)

ご相談者:不動産買取会社
横浜市西区

 当社で神奈川県横須賀市のある不動産を購入しました。
 今後、その不動産を加工し、売却する予定なのですが、問題が1つあります。
 目の前の道路が地主さんの単独の所有となっており、持分がありません。
その地主さんにお願いに伺ったところ、地元の設計会社を紹介され、その代表の方とお会いしました。
 ところがそのやり取りの中でどうしても私道の通行の承諾がもらえず、交渉も完全に破談となってしまいました。
 交渉の最中にいろいろと設計会社に言われ、当社としては2度と直接設計会社と話をしたくありません。
 私道の通行の承諾書の取得ができなければ、売れない物件となってしまう。
 何とか御社にて地主さんより私道の通行の承諾書の取得をしていただけないでしょうか?

状況

金額がつかみづらい私道の値段の話(神奈川県横須賀市) 状況
【所在】神奈川県横須賀市
・駅から徒歩件で住宅需要があるエリア
・前面道路が私道で地主さんからの承諾が得られない
 ※地元の設計会社が管理としてはいっている
 ★私道の持分がなく、通行の承諾書がない時にはほとんどの
  金融機関の住宅ローンを使用することができません
・相談者と設計会社の間で交渉がすでに破談している
 ※相談者と設計会社で直接話ができない状況

解決策

1. 相談者との打ち合わせ

 相談者(法人)より「購入した不動産が私道トラブルがあり、売却しようにもできない」旨の相談をいただき、相談者の代表者の方とお会いして、打ち合わせをしました。
 その際に相談者よりお聞きしたのは「購入した土地は、前面道路が私道で地主さんが単独でその私道を所有しています。そのため、地主さんに私道の通行について、お願いに伺ったのですが、地主さんからは地元の設計会社と話をして欲しい旨のお話をいただきました。後日、その設計会社を訪問し、私道の通行のお願いをしましたが、その設計会社との協議が難航し、最終的に協議自体が破談となってしまいました。このままでは購入した物件を売却することができません。御社(当社)にて地主さんからの承諾を取得していただけないでしょうか?」というものでした。
 そして、この時、相談者より私道を管理している設計会社の担当者と連絡先をお聞きしました。

2. 私道の調査及び現地確認

 相談者にはとてもお世話になっているため、何とか時間を切り詰めて私道の調査と現地確認をしました。
 私道を調査したところ、もともと地主さんの先代が設計会社と組んで築造した「位置指定道路」という種類の道路でした。
 法務局で調査したところ、私道の所有者は地主さんのみでした。
 地主さんが土地の開発を行ったときに本来であれば、私道の持分もセットで売却しているということが一般的なのですが、今回の案件はそうではありませんでした。
 私道の境界標はところどころ無くなっていました。

3. 設計会社との私道に関する協議

 現地調査の後、設計会社に連絡をし、訪問のアポを取り付けました。
 そして、後日、菓子折りを持って、設計会社を訪問。
その際に今までの経緯も聞くことができました。
 設計会社の担当の方からは「もともと相談者が土地を購入される前に複数の不動産の方より私道を使わせてもらえないかとお願いに来られていましたが、全てお断りしていました。相談者の方とは過去に何度か連絡をとりましたが、対応について問題があったのでお断りさせていただきました。それにうちとしても、今後、直接、相談者の方とはお話したくないし、話すこともない」という内容のお話をお聞きすることができました。
 この時点では、今までの経緯の確認をし、菓子折り手渡し、後日、再度状況を確認して伺う旨のみを設計会社にお伝えしました。

4. 相談者との協議と再三再四にわたる設計会社との協議

 第1回目の設計会社との面談が終わり、相談者を訪問し、面談結果を報告。
 設計会社の主張についての相違点や打開策について協議を行いました。
 そして、その内容について後日、設計会社とも協議を行いました。
その際に設計会社の方が言われたのは、「うちの言うことが聞けないのであれば、駐車場の前にポールを設置して、車の出入りをできなくするようにもできるんですよ」ということでした。
 このような繰り返しを1年以上続け、少しずつですが、協議を進めていくことができました。

5. 私道の値段と合意書の締結

 私道について、私が設計会社と協議を行っていった結果、1年を経過頃から具体的なお話をできるようになりました。
 そして、その内容を相談者、設計会社で精査していきました。
 最終的に99㎡の私道の持分20分の1を608万円で売買することで話がまとまりました。
 その条件は、次の通りです。
※下記費用は売買代金とは別にかかる費用でした

・私道の確定測量図の作成
 ※測量費用の46万円は相談者の負担
・私道の隣接の地主さんの土地の確定測量図の作成
 ※測量費用の65万円は相談者の負担
・地主さん所有のブロック塀の一部の撤去
 ※費用は相談者の負担
・私道にある電柱の移設
 ※費用は相談者の負担

 このように相談者は私道の持分を購入し、土地の境界を確定するために750万円以上(登記費用含む)がかかってしまったのです。
 設計会社としては、「この主張が通らないのであれば、一切協力はしない」というものでした。
 大きな金額が動くため、測量開始前に合意書の締結をし、測量作業が終わったところで売買契約の締結をすることにしました。

6. 確定測量の実施

 諸条件がまとまり、土地家屋調査士の先生による確定測量に取り掛かりました。
 相談者の従業員の方と夏の暑い日に現地で境界立会いを行いました。
 その際、地主さん、近隣住民の方にも境界立会いをしていただき、最終的に無事に私道と私道に隣接する地主さんのご自宅の確定測量が完了し、測量面積と登記簿の差異については、地積更正登記という作業を行い、全ての測量作業を終えることができました。

7. ブロック塀の撤去と電柱移設の協議

 確定測量図の作成の後は、地主さんに再度現地で立ち会っていただき、地主さん所有のブロック塀の撤去と電柱移設位置の協議を行いました。
 そして協議内容をもとにブロック塀の撤去と電柱の移設を実施しました。

8. 売買契約の締結と引渡し

 全ての作業が整ったところで地主さんのご自宅にて私道の売買契約を締結し、お引渡しをしました。
 売買代金は、当初の合意書の通り、私道の持分20分の1を608万円でした。
 ただ、ここまでの作業を実施できたことにより、相談者は売却予定の土地を2分割し、販売できるようになったのです。
※その後、相談者は土地を2分割し、販売できたことで多額の利益を得ることができました
 そして、1年半以上も、協議に、協議を重ねてきた案件を無事に終えることができました。

担当者からの一言

 今回の案件のポイントは、「私道の値段」でした。

 当社では度々、私道の売買をすることがあります。
 その都度思うことは、私道の値段は案件によりまちまちということです。
 今回のように購入希望者がどうしても私道を欲しいといった場合には当然、私道の値段は「高く」なりますし、逆に地主さんのほうで私道の管理が煩わしいから手放したいというときには、当然、私道の値段は「安く」なります。
 今回の私道の持分20分の1の値段は諸費用も含め約750万円でしたが、過去には持分4分の1で100万円のときもありましたし、持分ではなく私道そのもので10万円や20万円のときもありました。
 もし、私道の持分がなく、通行の承諾書もない状態であれば、お金を支払ってでも私道の持分を購入するか、通行の承諾書を取得すべきだと私は思います。

 特に地主さんと関係が良好なタイミングでそういった私道の「お願い」のお話をお持ちすべきでしょう。
 そうしなければ、将来、売却のときに承諾書のお願いに行った際、思わぬ出費がでたり、売れない物件が出来上がってしまう可能性があります。
 それにしても、今回の案件は設計会社の方の上から目線に何回も心が折れそうになりました。
 諦めず、地道に協議を行っていったことで最終的には無事に相談者の問題を解決することに成功しました!
 この案件で何回横須賀市に行ったかわからないくらいです。(苦笑)

関係者のみなさま、本当にありがとうございました!