ご相談事例

土地相続で取得した市街化調整区域の農地を高く売却したい!

ご相談者:T.K 様(大手不動産会社のご紹介)
神奈川県横浜市緑区

 横浜市港北区に相続で取得した農地があります。
その農地は市街化調整区域にあり、建物の建築ができません。
 現在は、親戚4名で共有しています。
 今後、相続が発生し、さらに共有者が増える前に高い金額で売却したいと考えています。
 御社にてご協力いただけないでしょうか?

状況

相続で取得した市街化調整区域の農地を高く売却したい! 状況
【所在】神奈川県横浜市港北区小机町
・駅から距離から若干距離がある現在使用されていない農地
・市街化調整区域の農地のため、売買には農地法の許可が必要
・共有者4名で共有
・境界が一部不明
・公図(土地の場所を示す図面)と現況の境界線の位置が相違
・地型が三角形
・前面道路は片側2車線で大型車両も通行可
・北側隣地はJR横浜線の線路があり、騒音・振動がする

解決策

1. お客様との打ち合わせ

 ご紹介者(大手不動産会社の方)より「市街化調整区域の農地を売却したいお客様がいるのですが、今まで市街化調整区域の農地の売却をしたことがなく、売却方法がわからないため、私の代わりに売却活動をしてもらえないでしょうか」というお話をいただきました。
 そして、すぐに売主様のうちの一人(代表者の方)にご連絡をし、訪問しました。
 当初、売主様は他の不動産会社(住宅の販売を専門とする)にもご相談されていたそうですが、当社の過去の農地の売買や難しい案件の取り組み実績を評価していただき、当社にお任せいただくこととなりました。

2. 物件調査

 売主様とお会いした後に物件調査を実施。
 土地の制限については、売主様よりお聞きしていた通り、市街化調整区域の土地で建物の建築ができない土地でした。
 もし、特別な許可を取得し、建築許可が下りたとしても土地の地型が三角形であること、近くに水道管の埋設がないこと、隣地に線路があり、列車の通過時に振動があることなどからしても、現実的に考えても建物の建築は難しいと思える土地でした。
 そして、農業委員会において、農地法の許可の取得が売主様及び立地基準的に可能かどうかもヒアリングしました。
※農地法の許可証が売買時の所有権移転の必須書類となります
 その結果、売主様及び立地基準的に農地法の許可取得は可能との見解を得ることができました。
 あとは、買主様に今回の物件の必要性があるか、資金的に問題ないか等、買主様の要件を基準をクリアできるかどうかでした。
 ただ、ここについては、販売する前では何とも言えない部分だったため、とにかく、農地法の許可取得要件を満たす買主様を一人探していく、これしかありませんでした。
 また、調査において、法務局備付けの公図(場所を表す図面)と現況の境界線に相違があることが発覚。
 これについては、買主様がみつかった時点で対処していくよう売主様と打ち合わせをしました。

3. 相場のリサーチと売却活動

 物件調査後に周辺の土地がいくらくらいで売れているのか、いくらで売りに出されているかをリサーチしました。
 ただ、市街化調整区域の土地の場合、大半が宅建業法適用外のことも多く、ほとんど取引事例はありませんでした。
 そのため、売主様と打ち合わせをした結果、当初の販売価格は数少ない周辺の取引事例の最も高い金額にさらに上乗せした金額、つまりは売主様のご希望金額より販売を開始することにしました。
 前述の通り、売主様は4名共有のため、売却開始の際に締結する媒介契約書に代表者の方にご記入いただき、他の3名からは代表者へ売却に関する内容を委任します、という委任状をご用意いただきました。
 媒介契約書関係一式が揃い、売却活動をスタートしました。
 「建物の建築ができない市街化調整区域の農地」でしたが、意外にも反響はそこそありました。
 お問い合わせいただいたお客様は、ほとんど土木会社や建築会社の方からで「車両置場・資材置場で借りているところの家賃が結構するため、融資を利用できるようであれば、購入したい」というものでした。
 ただ、市街化調整区域の農地は、金融機関の担保評価も低いため、なかなか条件に見合うお客様が現れませんでした。
※資金を準備できるお客様が現れませんでした。

4. 購入申込の取得と諸条件の協議

 そんな中、インターネット経由にてお問い合わせをいただいたお客様に現地をご見学いただきました。
 そして、お客様より「鶴見で車両置場を借りているのですが、今後、業務で使用する大型重機が増える予定のため、新しい車両置場を購入しておきたい。金融機関にも話してあります。現地も確認し、いい物件だと思いますので、この話を進めてほしい。」旨のお話をいただきました。
※購入希望者の方は農地法許可の取得要件を備えているお客様(法人)でした
 購入希望者の購入条件は、契約前に仮測量の実施・境界標の設置・公図と現況の境界線の確認・公図の訂正は売主様の負担、農地法許可取得費用は買主様の負担、加えて若干の価格交渉がありました。
 購入希望者の購入条件と売主様の売却条件には多少の相違があったため、再三、再四に渉り、調整・協議し、双方合意いただくことができました。

5. 仮測量の実施と売買契約の締結

 土地の境界線が公図と現況が異なるということからも面積が登記簿と相違する可能性があるため、売買契約締結前に土地家屋調査士の先生に依頼し、仮測量を実施しました。
 その仮測量の結果、登記簿面積と若干誤差はあったものの、買主様からも「面積の相違がほとんどなかったで、次は契約の締結に進みたい」というお話をいただくことができました。
 そして、後日、売買契約の締結となりました。

6. 農地法の許可申請

 売買契約締結後、すぐに行政書士の先生に「農地法の許可申請」をお願いしました。
 前述の通り、市街化調整区域の農地の売買は、所有権移転登記の際に農地法の許可証が必要となります。
 農地法の許可申請に際しては、現場の作業予定図面や見積り、その他詳細資料を準備・作成する必要があり、専門的な知識が必須となります。
 この農地法の許可は、許可申請から許可まで約2~3ヶ月かかってしまいます。
 そして、フットワークの良い行政書士の先生により、無事に農地法第5条の許可を取得することができました。
※農地法第5条許可:買主様が農地を購入後、他の用途に転用するための許可

7. 確定測量の実施・公図の訂正

 売買契約締結後は、農地法の許可申請と同時に土地家屋調査士の先生に土地の測量作業(境界確定)を行っていただきました。
 測量作業においても何の問題も発生せずに境界確定及び公図訂正を終えることができ、これにより公図と現況の境界線の相違を解消することができました。

8. 本人確認と残代金・お引渡し

 売買条件が成就したところで、残代金に向けての準備を開始。
 所有権移転登記の手続きは、買主様が利用する金融機関指定の司法書士の先生にて行うことになっていました。
 売主様のうち2名の方は、残代金時にご出席することができないことが確定していたため、予め司法書士の先生と一緒にご自宅を訪問す、本人確認作業を実施。
 売主様がご高齢と言うこともあり、司法書士の先生と協議のうえ、売主様の主治医の先生からの意思能力についての意見書をいただきました。
※意思能力に問題はないという見解でした
 そして、事前の本人確認を終え、後日、買主様が利用する金融機関にて残代金・お引渡し手続きを完了しました。
 

9. 引渡し後の地中障害の発覚

 土地のお引渡しの数日後、買主様より「農地法の許可申請時の図面の通り、工事しようと掘削したところ、地中より大量のゴミやガラがでてきました。これでは当初の予定通りの工事ができません。売主様に撤去していただくようにお話ししてください。」という内容のご連絡をいただきました。
 そして、すぐに売主様に現地の地中のゴミやガラの状況を確認していただきました。
 地中障害の撤去費用の金額についての協議はあったものの、お互いに誠意をもって協議していただいた結果、双方がご納得いただる解決方法を導き出すことができました。

担当者からの一言

 今回の案件のポイントは、「市街化調整区域の農地の売買」でした。
 市街化調整区域や未線引き区域の農地は、売買・賃貸の際に農地法の許可が必要となります。
 この許可を取得するためにはかなりハードルも高く、中にはそれゆえに売却を諦めてしまう売主様も多数いらっしゃいます。
 農地の売買・賃貸については、実は首都圏の不動産会社の営業担当者はその方法(ノウハウ)を知らない方が大部分です。
 もし、そういった営業担当者に農地の売買・賃貸を任せてしまうと…資産を目減りさせてしまう恐れがあります。
 本当は農地の売買のノウハウがある営業担当者に売却を依頼したら1,000万円で売却できたかもしれない農地を、全く農地のことがわからない営業担当者に依頼すると500万円以下、もしくはいつまで経っても売れないことだってあるのです。

 そう考えると不動産の売却、特に「農地の売買」はノウハウがある専門家にお願いすること、これが「農地を高く売ること」になるのです。

関係者のみなさま、本当にありがとうございました。